2026/5/26
記事

はじめに
再生可能エネルギーの調達手段として、企業・自治体から注目を集めるオフサイトPPA。敷地外に設置した再エネ発電所から、小売電気事業者を通じて電力を供給するこの仕組みは、初期費用ゼロで導入でき、敷地条件に左右されない点が最大の特徴です。本記事では、オンサイトPPA・自己託送との違い、託送料金・再エネ賦課金の扱い、フィジカルPPA・バーチャルPPAの種類、導入メリット・デメリット、そして実際の導入事例まで、企業の脱炭素担当者に向けてわかりやすく解説します。
新谷 謙太
株式会社JERA Cross コンサルティング本部 部長
日系大手航空会社にてマーケティングに携わった後に、コンサルティング会社でエネルギー業界の戦略企画と施策実行を支援。JERA Crossには2024年2月より参画
オフサイトPPAとは、コーポレートPPA(Corporate Power Purchase Agreement=電力購入契約)の一形態で、発電事業者が電力需要場所の敷地外に太陽光発電設備などを設置し、小売電気事業者を経由して企業・自治体に再生可能エネルギー由来の電力を供給する仕組みです。発電設備の所有・維持管理は発電事業者が担うため、需要家(企業・自治体)は初期費用ゼロ・メンテナンス負担ゼロで再エネ電力の調達を開始できます。
コーポレートPPAは大きく以下の2種類に分類されます。
種類 | 発電設備の設置場所 | 特徴 |
オンサイトPPA | 需要家の敷地内(屋根・駐車場・遊休地など) | 送配電ネットワーク不使用のため託送料金・再エネ賦課金が不要 |
オフサイトPPA | 需要家の敷地外(遠隔地の太陽光発電所など) | 一般送配電網を通じて供給。託送料金・再エネ賦課金が発生。(※バーチャルPPAを除く) |
太陽光は天候・時間帯によって発電量が変動します。オフサイトPPAで賄いきれない電力は、小売電気事業者が市場や別電源から調達して補完するケースが一般的です。固定単価プランまたは市場連動型プランから選べるサービスも増えています。
オフサイトPPAは電力・環境価値の扱い方により、さらに2つに分類されます。
種類 | フィジカルPPA | バーチャルPPA |
電力の流れ | 物理的に供給(系統経由) | 物理供給なし(差金決済のみ) |
環境価値 | 電力と環境価値がセット | 環境価値のみ調達 |
日本での普及 | 主流 | 限定的(途上) |
主な用途 | 再エネ電力調達・Scope2削減 | 価格ヘッジ・リスク管理 |
PPA事業者が実際に発電した電力を、送配電ネットワークを通じて需要家に物理的に供給する形態です。電力と環境価値(非FIT非化石証書など)がセットで調達でき、追加性のある再エネ電力として計上できます。
電力の物理的な供給は通常の電力市場から行い、発電事業者と需要家の間では価格差決済(差金決済)のみを行う形態です。電力そのものは受け取らないため、海外では普及していますが、日本国内ではコストの観点もあり、導入事例はまだ限定的です。
再エネ調達手段として混同されやすい3つの方法を整理します。
比較項目 | オフサイトPPA | オンサイトPPA | 自己託送 | 備考 |
発電設備の場所 | 敷地外 | 敷地内 | 敷地外(自社) | — |
発電設備の所有 | 発電事業者 | 発電事業者 | 需要家自身 | — |
初期費用 | 不要 | 不要 | 必要(自社投資) | — |
託送料金 | 発生 | 発生しない | 発生(需要家負担) | — |
再エネ賦課金 | 発生 | 発生しない | 発生しない | — |
敷地制約 | なし | あり | なし | 屋根・日照等 |
複数拠点への供給 | 容易 | 拠点ごとに設置 | 可能(管理複雑) | — |
オフサイトPPAは「敷地がない・屋根の耐荷重が足りない・日照条件が悪い」企業や、「複数拠点をまとめて再エネ化したい」企業におすすめです。
太陽光発電設備の設置・工事コストはすべてPPA事業者が負担します。自社の資本支出を抑えながら再生可能エネルギーを調達でき、資金繰りや設備投資枠を他の事業に活用できます。
屋根の耐荷重不足・日照時間の少ない立地・賃貸物件など、オンサイトPPAでは導入が難しい場合でも対応可能です。PPA事業者が発電条件の良い場所に太陽光発電所を建設するため、需要家側の敷地制約を受けません。
敷地外の大規模太陽光発電所から電力を供給するため、自社屋根や敷地内に設置できる発電設備以上の電力量を再エネで賄えます。電力使用量が多い工場・データセンター・商業施設などに有効です。
PPAは一般的に10〜20年の長期契約で単価を固定します。燃料価格高騰や電力市場の価格変動リスクをヘッジでき、中長期的なエネルギーコストの見通しを立てやすくなります。
支店・工場・倉庫など複数の需要場所に対して、1つの太陽光発電所からまとめて電力を供給する仕組みを組成できます。拠点ごとに個別対応する手間が省けるため、多拠点展開している企業に特に有効です。
オフサイトPPAで調達した電力は、非FIT非化石証書(トラッキング付)などの環境価値とセットで購入するため、Scope 2(エネルギー起源CO₂)の削減実績として計上できます。RE100・SBT・GHGプロトコルへの対応にも活用できます。
電力を系統経由で供給するため、託送料金・再エネ賦課金・燃料費調整額が上乗せされます。オンサイトPPAは系統を通さないためこれらのコストが発生しない分、オフサイトPPAはコスト削減メリットが出にくいケースがあります。
送配電ネットワークを経由する構造上、系統停電時には電力供給が止まります。オンサイトPPAのように自家消費システムを構築した場合とは異なり、BCP(事業継続計画)の観点での活用は難しいです。
10〜20年の長期契約となるため、途中での解約・変更にペナルティが発生するケースがあります。また制度・政策の変更(再エネ賦課金の制度変更など)によるコスト変動リスクも考慮が必要です。
発電事業者・小売電気事業者・送配電事業者など複数のステークホルダーが関与するため、契約構造が複雑になります。適切なPPAアドバイザーやパートナー選定が重要です。
RE100(事業電力を100%再エネで賄う国際イニシアチブ)に加盟する日本企業は増加しており、Scope 2排出量削減のための再エネ調達手段として、オフサイトPPAへの関心が高まっています。また取引先からのサプライチェーン脱炭素要請も強まり、中堅・中小企業にも対応ニーズが広がっています。
都市部のオフィスビル・賃貸工場・複合施設など、屋根や敷地を所有していない(または発電設備を設置できない)企業が多く存在します。こうした企業にとって、オフサイトPPAは実質的に唯一現実的な再エネ直接調達手段となります。
燃料費の高止まりや電力市場の価格変動が続く中、固定単価で長期間電力を確保できるPPAの価値が再評価されています。特に電力消費量が多い製造業・物流・データセンター事業者を中心に導入検討が増加しています。
現状把握・適性確認 ── 電力使用量・拠点数・契約形態・設備制約の整理
事業者選定・提案依頼 ── 複数のPPA事業者から条件・単価・供給安定性を比較
シミュレーション ── コスト試算、CO₂削減見込み、既存契約との比較検討
契約締結 ── PPA事業者・小売電気事業者・送配電事業者との三者協議
発電所建設・系統接続 ── 事業者主導で進行(需要家の工数は最小限)
電力供給開始 ── モニタリングと定期報告の体制整備
JERA Crossは、JERAグループのエネルギー調達・供給力とGXコンサルティング知見を組み合わせた脱炭素電力供給サービス(GEM)を提供しています。
RE100目標の設定・Scope 2削減ロードマップ策定から、実際の電力供給契約・環境価値管理まで、コンサルティングと電力調達を分断なく支援します。「戦略だけ作って終わり」にしない伴走型のサポートが強みです。
日本最大級の発電事業者JERAのアセット・ネットワークをベースに、安定した再エネ電源の調達・確保を支援します。
単なる年間一致型の環境価値調達にとどまらず、時間帯単位でカーボンフリー電力との一致を目指す先進的な調達支援にも対応しています。
オフサイトPPAで賄いきれない電力分の非化石証書調達や、バンドル型の環境価値管理もワンストップで対応可能です。
JERA Crossのオフサイト型コーポレートPPAが実際に採用された事例として、株式会社コシダカ様との取り組みをご紹介します。
カラオケ・温泉事業を中心にエンタテイメントサービスを展開するコシダカグループは、2030年度までに自社で使用する電力の30%以上を追加性のある再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げていました。
JERA CrossはJERAと連携し、コシダカ様が展開する「カラオケまねきねこ」の東北エリア22店舗に対して、敷地外の太陽光発電所から送配電ネットワークを通じて再エネ電力を供給するオフサイト型コーポレートPPAを導入。2025年4月1日より電力供給を開始しました。店舗側に発電設備の設置スペースや初期投資は一切不要で、複数店舗への一括供給が実現しています。
項目 | 内容 |
導入先 | 株式会社コシダカ「カラオケまねきねこ」東北エリア22店舗 |
供給開始 | 2025年4月1日 |
年間供給電力量(見込み) | 約67万kWh |
CO2削減見込み | 年間約320 t-CO2程度(現時点での試算) |
今後の展開 | 各地域店舗・コシダカ各事業の再生可能エネルギー100%化を目指して両社が連携を継続 |
※ CO2削減見込みは現時点での試算であり、確定値ではありません。
出典:JERA Cross プレスリリース(2025年4月24日)https://www.jera-cross.com/ja/news/23
屋根の耐荷重不足・日照条件・賃貸契約などでオンサイトPPAが難しい
複数拠点を一括で再エネ化したい
初期投資ゼロで再エネ電力調達を始めたい
RE100・SBTi・Scope 2削減に取り組んでいる
長期的な電気料金の安定化を図りたい
脱炭素調達の実績をステークホルダーに示したい
A. 現在の市場電力価格との比較によります。固定単価で長期安定を確保できるメリットはありますが、必ずしも既存電力料金より安くなるとは限りません。シミュレーションをもとに比較検討することをおすすめします。
A. はい、オフサイトPPAでは一般送配電網を経由するため、通常の電力と同様に再エネ賦課金が発生します。オンサイトPPAとの主な費用差の一つです。
A. 一般的に10〜20年の長期契約が多いです。契約期間中の解約条件は事業者ごとに異なるため、事前に確認が必要です。
A. 国内での再エネ電力の「実質的な調達」と環境価値の確実な取得を重視する場合はフィジカルPPA、ヘッジ目的でのリスク管理を重視する場合はバーチャルPPAが選択肢となります。日本では現状フィジカルPPAを選択するお客様が多い印象です。
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