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ケーススタディ:コクヨ×JERA Cross 

ケーススタディ:コクヨ×JERA Cross 

2026/10/16

特集

はじめに

コクヨグループは、マテリアリティの一つに「気候危機への対応」を掲げ、2030年までにScope1・2の温室効果ガス排出量を2022年比で42%削減する目標のもと、電力の脱炭素化を進めてきました。品川の自社オフィス「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」も、2024年までに再生可能エネルギーへの切り替えを完了しています。

そのうえで2026年4月、THE CAMPUSはJERA Crossとの協業により、地熱・太陽光由来の再エネ電力を一部導入しました。太陽光由来の電力供給が途絶える夜間にも、安定して再エネ電力を確保できる仕組みです。

すでに再エネ化を進めていた電力を、なぜ地熱まで含めて見直したのか。その選択は、脱炭素化にとどまらず、社員の行動変容や顧客との対話にもつながっていきます。電力が「単なるインフラ」から、働く場の価値へと変わるまで——その変化と経緯を、コクヨの皆さまに伺いました。

新谷 謙太

株式会社JERA Cross コンサルティング本部 部長

日系大手航空会社にてマーケティングに携わった後に、コンサルティング会社でエネルギー業界の戦略企画と施策実行を支援。JERA Crossには2024年2月より参画

「自律協働社会」の実現に向けて——コクヨが働く場の"電力の質"まで問う理由


図形Interview:コクヨ株式会社

  • 菅原 俊光氏/ヒューマン&カルチャー本部 働き方改革推進総務部 ユニット長

  • 伊藤 太一氏/CSV本部 サステナビリティ推進室 環境・調達ユニット 気候危機タスクフォースリーダー

  • 吹田 英明氏/グローバルワークプレイス事業本部 顧客ソリューション第2本部 法人営業第1部 第3グループ グループリーダー

  • 安達 朔太郎氏/グローバルワークプレイス事業本部 顧客ソリューション第2本部 法人営業第1部 第3グループ

01|長期ビジョンを起点に。コクヨが目指す「自律協働社会」とは

—— コクヨ株式会社が再生エネルギー導入に取り組む起点には、長期ビジョンとして掲げる「自律協働社会」の実現があります。THE CAMPUSへの地熱・太陽光由来の再生可能エネルギー導入は、その実現に向けた取り組みのなかで、どのように位置づけられるのでしょうか。  

菅原:コクヨでは、「自律協働社会が実現されている状態」を、社会課題が解決され、人も、社会も、地球もウェルビーイングな状態だと設定しています。
今回のプロジェクトは、その中でも特に「地球のウェルビーイング」に向けた取り組みとして位置づけています。 

コクヨ株式会社自社オフィスTHE CAMPUS外観

▲THE CAMPUSは、コクヨが自らの働き方を実践しながら、新しい働く環境を顧客に提案する「ライブオフィス」。ここで同社が重視しているのは、空間や設備だけを整えることではありません。この「地球のウェルビーイング」という考え方を、理念で終わらせず、社員の日々の働き方へと落とし込む実践の場です。

菅原:働く環境は、「働く場」と「働く場の運用」がセットになってつくられます。空間や設備だけで完成するものではなく、そこで働く人がどのように行動し、価値観を共有し、日々の仕事を営むか。そのためのルールや仕組み、コミュニケーションまで含めたものが、「働く場の運用」です。

オフィスをつくることと、そのオフィスを使いながら組織文化を育てていくことは、切り離せません。再生可能エネルギーの導入もまた、単なる電力調達の変更ではなく、THE CAMPUSという働く場をより良くしていく取り組みの一部として始まりました。  

02|共感から行動を変える——脱炭素を通じたカルチャー変革 

菅原:カルチャー変革は、人の行動が変わることで初めて実現します。そして人が行動を変えるのは、その物事に共感して初めてできること。だからこそ、共感を生むための仕組みや体験を設計することが重要です。

その考え方を象徴する取り組みのひとつが、ゴミ分別の課題に向き合う「ステナイステーション(通称「ステステ」)」です。「ゴミを分別してください」とポスターにそのまま書くだけでは、なかなか分別してもらえません。デザイン性の高いポスターなどを通じて、自然と「分別しよう」という気持ちになってもらう取り組みをしています。

伊藤:同じく行動変容を促す取り組みとして、以前、総務部で「身近な階ではエレベーターを使わず、階段を使おう」という呼びかけをしていました。しかし、一方的に「やりましょう」と言うだけでは、なかなか変化がありませんでした。

ごみの分別を促すビジュアル性の高いポスター

▲分別指導の文字貼り紙から分別廃棄を考えるビジュアルストーリーに掲示の仕方を工夫しています。

—— 今回の「地熱の導入」や脱炭素も、「目に見えにくいテーマ」ですよね。共感を生み出すために、どんな取り組みをされているのでしょうか。

菅原:地熱発電由来の電力を導入したことについても、THE CAMPUSを案内するためのトークスクリプトに組み込みました。社員がそれを読んで、「自社ではこういう取り組みをしているんだ」と実感したうえでお客様をアテンドする。そうやって、ライブオフィスと再エネ導入の距離を縮めています。

THE CAMPUSは、社員自身が日常的に使い、来訪者に紹介する場所。だからこそ、取り組みを身近な体験として伝えられます。普段は意識されにくい電力を、社員が自らの言葉で来訪者に語る。その過程で、脱炭素は「誰かが担当する環境施策」から、自分たちの働く場を構成する要素へと変わっていきます。

伊藤:単に脱炭素のための経費や投資として捉えるのではなく、自分たちがコンテンツとして提供する「ライブオフィス」という身近な場で実践したからこそ、社員がより意識的に関われる導入の仕方ができました。それが、今回実現できたことだと思います。

03|発電所への現地視察で得たのは「電力の質」への問い 

今回の取り組みでは、コクヨの気候変動タスクフォースのメンバーが地熱発電所を視察しました。参加したのはコーポレート部門だけでなく、エネルギーを多く消費する工場のメンバーです。 

伊藤:コクヨには、脱炭素にフォーカスした社内横断のタスクフォースがあります。コーポレート部門と工場のメンバーなどが参加し、グループ全体の脱炭素や自律協働社会の実現に向けて何ができるかを、構想から技術的なリアリティまで含めて考えているんです。

タスクフォースの活動を始めた当初は、太陽光を導入すれば再生エネルギー化を進められる、という理解に近かったといいます。しかし検討を重ねるなかで、太陽光発電は日照のある時間に発電が限られることなど、電源ごとの特性を学んでいきました。

地熱発電所見学の様子

伊藤:リアリティのある解決策を考えるうえで、現場を見ることはものすごく大事です。実際に地熱発電所を見に行ったことで、太陽光だけではない選択肢や、電源の特性への理解が深まりましたね。

視察で印象的だったのは、発電所の運営そのものでした。
僕らの目線ではかなり大きな設備でしたが、少人数で自動化が進んでいました。非常にクリーンで、きれいな環境も保たれている。工生産技術や設備メンテナンス、エネルギー管理に携わる工場メンバーからは、「何かを生産する工場として見習うところがすごくある」という声がありました。

「どのように発電された電力を買う必要があるのか」「自然環境や環境設備を気にしていない会社から買うとまずいかもしれない」といった意見も出ました。どのような視点で電力を選ぶべきかを考える、全社的な発見になったと思います。

04|なぜ地熱を選び、JERA Crossと進めたのか

コクヨは、気候危機を重要課題の一つに位置づけ、「2050年カーボンニュートラル」と「2030年までの中間目標」を掲げています。検討チームが立ち上がった2022年から、再生エネルギー導入に関する議論を続けてきました。

伊藤:温暖化は暑さなどを通じて身近に感じられる一方、解決手段となる遠方の風力発電などは、個人にとって実感を持ちにくいものでもあります。社内で再エネ契約の話を進める際も、「経費」や「減価償却」の議論に終始しがちでした。だからこそ、もっと身近に感じられる工夫が必要だと考えていました。

菅原:THE CAMPUSではもともと、空調熱源として蓄熱システムを活用し、深夜電力を使って熱源をつくる運用を行ってきました。しかし、深夜電力の割引制度がなくなり、契約上のメリットが薄れるなかで、24時間安定して供給できる再生可能エネルギーを検討。その選択肢として、地熱発電由来の電力の有効性に着目しました。

社内決裁を得るうえでは、当社の電力使用特性を踏まえ、「24時間供給される再エネが望ましい」という前提をまず伝えました。そのうえで、風力発電には供給安定性やコスト面での課題があることと、一方で地熱は火山国である日本ならではの貴重なエネルギー財産であることを説明し、決裁を得ました。

伊藤:ライブオフィスのコンテンツとして取り上げることで、空間事業のメンバーにも、空間や家具だけでなく、インフラとしてのエネルギーも重要だと意識してもらいたいと考えています。そうすれば、お客さまへの提案や社内の意思決定も変わってくるはずです。社員が取り組みを知り、自らの言葉で伝え、来訪者との対話を通じて理解を深めていく。そうした循環そのものが、今回得られた成果の一つです。

—— 再生可能エネルギー導入にあたってのパートナー選定では、複数社から提案を受けたそうですが、JERA Crossを選んでいただいた理由をお伺いできますでしょうか。

菅原:他の小売事業者からは既成の契約メニューを掲示いただき、現状に合うものを選ぶというアプローチが一般的でした。一方、JERA Crossは、私たちの特性や課題を踏まえ、「こういう課題があるのではないか」「こういうやり方があります」と、さまざまなアイデアを出してくださいました。

検討の幅が広がっただけでなく、提案のプロセスを通じて、これまで見えていなかった視点も得られました。だからこそ、単なる電力供給会社ではなく、パートナーシップを組める非常に良い相手だと感じ、選ばせていただきました。

05|「作って終わり」から「運用まで」へ——コクヨの提供価値の進化

吹田:これまでは、サステナビリティや脱炭素について、自社の実践として語れる材料が十分ではないと感じていました。しかし今回、THE CAMPUSで脱炭素に資する電力調達を実現したことで、確かな実績ができました。

オフィスは、つくって終わりではありません。そこで働く社員の皆さんが、いかに生き生きと働けるか。その運用まで含めて考えることが大切です。私たちは空間を通して、働く方の思いやカルチャーを変えていきたいと考えています。

お客さまから「コクヨは、サステナビリティや脱炭素にどう取り組んでいるのですか」と聞かれたとき、胸を張って「電力調達を脱炭素化しました。太陽光だけでなく、地熱も取り入れています」と話せます。

電力の切り替えという機能的な取り組みを、コクヨらしい「夢や志を叶えるストーリー」として語れるようになった。それが、お客さまとの対話や提案に深みを生んでいると感じます。

安達:自分が働いている環境の電力が脱炭素化されているという事実は、お客さまに対する大きな自信であり、提案の材料にもなっています。内装やデザインといったハードだけでなく、運用や組織カルチャーといった上流のソフト面からも提案できるようになりました。

吹田:THE CAMPUSに来られるお客さまは、さまざまな課題や経営層からの宿題を抱えていらっしゃいます。そこで「私たちは脱炭素化の手段の一つとして、地熱を採用しています 」とお伝えすると、「詳しく聞かせてほしい」という反応が生まれます。

今後はコクヨが空間をつくり、JERA Crossが電力の脱炭素化を支える。オフィスを起点に、工場や配送センターの脱炭素化まで、「一緒にチャレンジしていきませんか」と言える仲間を増やしていきたいです。

06|電力を「コスト」から「価値」へ

JERA Crossは、「脱炭素をコストから価値へ」というミッションを掲げています。この考え方は、コクヨが今回の取り組みに込めた思いとも重なります。

菅原:JERA Crossの「脱炭素をコストから価値へ」というミッションは、まさに私たちが持っている想いそのものです。電力を買うことを単なる経費にするのではなく、場や環境の価値を高める本物の資産に変えていく。全く同じ志を持ったパートナーだと実感しています。

電力を何に切り替えるか——その選択は、企業の環境目標に関わるだけではありません。社員の行動をどう変えるのか。働く場でどんな価値を生み出すのか。そして、顧客とどんな未来を語るのか。

THE CAMPUSで始まった地熱活用は、電力を単なるコストから、働く場と社会の可能性をひらく価値へと変えていく挑戦です。

プロジェクト概要 

  • 企業名:コクヨ株式会社 

  • パートナー:株式会社JERA Cross

  •  導入拠点:THE CAMPUS(コクヨ株式会社品川オフィス)

  • 想定削減量:年間約37.5万kWh/約159t-CO₂

  • 取り組み:太陽光・地熱発電由来の電力を組み合わせた再生可能エネルギー由来電力の導入

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